この土地の魅力

ここは冷涼で、昼と夜の寒暖差があり、日当たりも風通しもいい場所です。この土地の条件を生かしながら、しっかり熟した、おいしいワインになる葡萄を育てたいと思っています。
少し隠れ家のような雰囲気があり、来てくださった方によく「いい場所だね」「ここは落ち着くね」と言っていただきます。私自身も、この畑がとても好きです。
以前、仕事で少し疲れていた方が、畑の作業を手伝いに来てくださったことがありました。帰るときに「癒された。来てよかった」と言ってくださって、その言葉がとても心に残っています。
体を動かして作業をしているのに、作業が終わった後の余韻がここちよい。私自身も、畑でそう感じることがあります。ここは葡萄を育てるだけでなく、自然の中で過ごしながら、ほっとしたり、自分の元気を取り戻したりできる場所にもなれるのだと思っています。
私が大切にしていること

私が目指しているのは、小ぶりな房や粒に、味わいの詰まった葡萄です。そのために、草を刈りすぎず、草にも水分や養分を使ってもらうことで、葡萄の樹勢を抑えるようにしています。枝葉が勢いよく伸びすぎるのを抑えながら、房や粒を小ぶりに育て、凝縮感のある味わいを目指しています。
房がつく位置は低くし、一番上のワイヤーは、私の身長で手が届いて作業できる高さにしています。その間に葉を十分に配置できるようにして、葉が重なりすぎず、光を受けてしっかり光合成できるようにしています。冷涼な土地でも、葡萄にしっかり熟してほしいと思って、私なりに工夫してみています。
食べてもおいしい葡萄ですが、私が見ているのは、その先にあるワインの味です。生食用の葡萄とは目指すものが違うかもしれません。甘さやみずみずしさだけでなく、酸味や香り、皮や種の成熟具合も見ています。酸っぱければいい、渋ければいいということではなく、それらがワインになったときにどう調和するかを考えて育てています。
小さな面積から最大限の量を収穫するより、一つひとつの樹に無理をさせず、小ぶりで充実した房を育てたい。そのうえで、無理なく管理できる仕組みを整えながら畑を広げ、必要な収穫量を確保していきたいと考えています。
できたワインを「フランスのワインみたい」「ワインらしい味わいだね」と言っていただくこともあります。そうした言葉をいただくと、自分が目指してきたものが、少しずつ形になっていると感じます。
私が目指す持続可能な農業とは何か

私にとって持続可能な農業は、自然環境と、そこで働く人の暮らしが、長く続いていく農業です。そのために、「畑」「人」「経済」の三つの持続可能性を大切にしています。
耕作放棄地を葡萄畑に変えても、その後、畑として使い続けられなければ意味がありません。一般社団法人では、畑を再生することと、その畑を人が無理なく維持していける仕組みづくりに取り組みたいと考えています。
畑の持続可能性について
私は今、畑の周囲にある耕作放棄地を再生する取り組みを進めています。きっかけは、周囲の荒れた土地が、動物や虫の被害、風通しの悪化などを通じて、自分の畑にも影響していると感じたことでした。
大切にしているのは、畑の中だけでなく、周りの環境から整えることです。被害につながる藪を刈ったり、必要な場所の木を切ったりして、葡萄が健やかに育ち、管理を続けやすい環境をつくってきました。有機栽培に取り組んでいるのも、自然の働きを生かしながら、長く続けられる畑をつくりたいからです。
ただし、自然の力を生かすことは、何もせず放置することではありません。畑にはさまざまな虫や菌がいます。すべてを排除しようとするのではなく、何が、どのような条件で増え、葡萄に被害をもたらすのかを知ることが大切だと思っています。
その工夫の一つとして、列ごとに葡萄の品種を変えたり、仕立ても変えています。生育の時期や病気への強さが異なる葡萄を組み合わせることで、同じ時期に同じ被害が畑全体へ広がるリスクを減らしたいと考えています。列ごとに品種を変える方法は、今の研修先であるドメーヌ小山田で初めて知りました。自分で畑を管理するようになって、その工夫の大切さを実感しています。
虫への対策でも、まず生態を知ることを大切にしています。例えば、コウモリガやスカシバ類の幼虫は、幹などに食い入り、樹を弱らせたり枯らしたりすることがあります。それぞれが、いつ、どのように侵入するのかを調べ、虫の種類に応じて草刈りの時期を調整したり、粗皮をむいたりして対策しています。
房に入るトリバ類の幼虫についても、羽化や産卵の時期を意識して観察しています。家で幼虫を育て、羽化の様子を見ることもあります。家と畑では条件が違いますが、「そろそろ畑でも注意して見てみよう」という手がかりになります。
こうして生き物のことを知り、畑と周囲の環境を整えることで、被害が大きくなってからの対処に追われるのではなく、日々の管理の中で予防できることを増やしていきたいです。
人の持続可能性について
畑を長く維持するためには、関わる人も、無理なく働き続けられることが大切だと思っています。時々、「畑を広げて、働く人はどうするの?」と聞かれることがあります。いくつかの方法を考えていますが、その一つが、福祉事業者と連携する農福連携です。
畑にはさまざまな仕事があります。一方で、自分に合った働く場所や、人と関わるきっかけを探している方もいます。ひきこもりを経験した方や発達特性のある方も含め、それぞれの希望や得意なことに合った形で、畑の仕事に関わっていただける場所にしたいと思っています。
私自身も発達特性があると診断を受けています。特性があっても、環境を整えることで十分に能力を発揮できると思っています。人によって、得意なことや心地よく働ける環境は違います。福祉事業者と相談しながら、一人ひとりが無理なく力を生かして働ける場所にしていきたいです。この畑が、自分の力を発揮できたり、人とのつながりを感じられたりする場所になればうれしいです。
また、動画を通じて、栽培の考え方や畑での日々を伝えることにも力を入れています。今年は動画を見た県外の方で、三組の方が、学ぶことを目的に畑作業を手伝いに来てくださいました。中にはこれから畑を持ちたい、その候補地として小諸も考えているという方もいました。
こうした発信を続けることで、小諸で葡萄を育てたいと思う人や、県外から定期的に訪れて関わってくれる人、いわゆる関係人口も増やすことができると思っています。人々が、無理のない形で関わり続けられる場所を目指しています。
経済の持続可能性について
畑を守り、人が関わり続けるためには、そこで働く人が適正な対価を得て、生活できることが欠かせません。そのために、ワインの販売に加えて、畑での体験や学びの機会もつくっていきたいと考えています。オーナー制度も、この土地やワイン造りを楽しみながら、継続して畑を支えていただく仕組みの一つです。
そこで生まれた収入を、働く人への対価や畑の維持、次の農地の再生につなげていく。再生した畑に人が集まり、仕事と収入が生まれ、その力でまた畑を守り、育てていく。私は、そうした循環をつくることで、環境と人と経済が一緒に続いていく農業を実現したいと思っています。
関わってくださる皆様と、この場所で実現したいこと

オーナーとして関わってくださる方には、「自分にも、訪ねていける葡萄畑がある」と感じていただきたいです。自然の中で一緒に過ごして、畑を歩いたり、葡萄を味見したり、収穫に参加したり。その葡萄がワインになって、手元に届くまでを、一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。
忙しい日常から少し離れて、ほっとしたいときにも訪ねてもらえる場所にしたいと思っています。離れていても、オンラインで畑の様子を見られる仕組みを整えたいと思っています。「今年はどう育っているかな」と気にかけながら、自分の畑のようにかわいがっていただきたいです。
届いたワインを飲むときに、畑で過ごした時間や、その年の葡萄の様子を思い出せる。一緒にワインを造っている実感とともに、耕作放棄地を再生し、この景色を次につなぐことに関わっている誇りも感じていただけたらと思っています。
そして、この土地で自分も畑を始めたいという、新規就農者の方も歓迎しています。オーナーとして楽しみながら支えてくださる方も、自ら葡萄を育てる仲間になる方も、それぞれの形でこの場所に関わっていただけたらうれしいです。
私は、有機栽培と持続可能な農業を目指しています。この土地や葡萄に魅力を感じ、その思いに共感してくださる方と、助け合いながら畑を育てていきたいです。私が好きなこの場所を、関わってくださる皆さんにとっても大切な場所にして、次の世代へ残していきたいと思っています。
